事業を行う際には、経営戦略やマーケティング、営業方法など色々と練り上げることとなりますが、その大本であり根本となるのが経営理念となります。
経営理念とは何か? 経営理念の決め方を見ていきます。
経営理念とは
フワ~っとした経営理念
経営理念といっても何かフワ~っとして一つのイメージがないような認識です。
実際に組織によって意味合いに幅があり、呼び方も企業理念や基本理念、行動指針、行動規範など他にもいろいろと有ります。
組織の中心となる考え方という部分は共通していると思いますが、なぜ統一したイメージがないのでしょうか?
お家の為に滅私奉公
伝統的な日本の会社組織の経営理念にあたるものは、昔からの流れを汲む「家訓」が元となってきました。
質素倹約、勤勉をしてお家の存続を第一に考え、その為に社員に滅私奉公を求めるといったものでした。
一方、欧米由来の経営理念の元は、基本的価値観と目的からできています。
基本的価値観とは、組織にとって不可欠で、普遍の真理で変えないものがそれにあたります。
これは宗教的背景に根差していると思われます。
さらに、会社組織とは、あくまでも経営理念を実現する器という位置づけで、実現の為に必要なシステムを作っていくものということが挙げられます。
擬似的な家族としての共同体と、システムとしての器という違いが今一つイメージしづらくなる所以ではないでしょうか。
どちらがいい悪いではなく、環境や文化的なもので変わってきます。
日本の現状はだいぶ欧米化が進んだものの、家族的な経営を残しているところもあります。
そのあたりが要因となって、経営理念の捉え方に幅があるのではないかと考えています。
経営理念を作る意味
それでは経営理念を明文化する意味はなんでしょうか?
スローガンや心得を掲げ、気を引き締める的な事だけなのでしょうか?
これは組織ごとで違いますので、正解はないのですが、一般的に見受けられる部分を5つほどピックアップしてみたいと思います。
企業イメージの向上
これは企業の大きさに関わらず、よく見るのではないでしょうか。
平和や社会貢献、環境保護などを掲げクリーンなイメージを打ち出したりするものです。
お飾り的な理由で作っている組織もあるとは思いますが、ブランドを確立するためには重要なことです。
国家権力に対する憲法のような存在
国の最高法規である憲法は、国民を縛るためにあるのではなく国家権力に対して縛りをかけるものです。
企業についても、個人では難しいことでも組織の大きい力ではできてしまうことがあるます。それが悪い方向に行かないように企業倫理として掲げるということです。
一部のグローバル企業は、時には国家より力を持つ存在となっています。
現場の取組みに根拠を持たせる
店舗での接客を例に出します。
ある時、新人のアルバイトさんが入りました。入って間もない為でしょうか、まだあまり声も出ていなくうまく接客が出来ていません。
当然、教育が必要になりますが、その時にただ「声を出して」や「店の決まりだから声を出すように」と言う場合と
「うちの経営理念は“地域の人々を笑顔で満たす”です。」
「それを実現する為にこの店は存在します。」
「そして、それを一緒に行うため、あなたに来てもらった。その為にはこういう接客が必要だ」
と伝えるのでは強さが違ってきます。
さらに、経営者の方や既存の従業員の方が経営理念の実現に向けて、本気で取り組んでいれば、新しい方もその風土に馴染んで行きやすく、やりがいを持ちやすいのではないでしょうか。
組織の意思統一を図る
人間100人いれば、100通りの考え方が有り価値観に違いがあります。
ある方向に向かおうとしている組織に、様々な価値観を持った方を招き入れ、方向づける場合にはどうしたらよいのでしょうか。
過去から使われてきたのは、アメとムチだったという歴史もあります。しかし今後もそれを継続していくのは、特にムチの方は社会情勢的に難しいと言えるでしょう。
大事なことは、少なくとも基本的な価値観が共有できる人間が集まり、そしてその内容をアナウンスし続けることです。
その為には価値基準が明確になっている必要があります。
ギャップで作るエネルギーと創造性
人間には恒常性と言って安定しよう、元に戻ろうとする生体機能が有ります。
例えば、暑いときに体温が上がり、自然と汗をかくことで体温調整をしようとする働きが備わっています。
これと同じように心理面でも、現状の空間を維持しようとする心の作用があるとされています。
その状態が良いか悪いかにかかわらず、慣れ親しんだ世界では安心、安定感があり、そこから違った世界へ動こうとすると不安や恐怖を感じ、元の世界へ戻ろうとする働きです。
成功したいにもかかわらず、何の根拠もないのに成功への不安や恐怖の気持ちが心のどこかに沸き起こるということが、わかり易い例でしょう。
この作用によって成功しようと頑張っている力にブレーキをかけようとする力が働きます。
このブレーキを外すために、目標として掲げる世界の方を馴染みあるものとして感じ、現状の世界にはとどまらないような心理的作用が生まれるようにします。
その為には、目標とする世界の方に馴染みやリアリティーを感じることが必要となり、理想とする世界や事柄を明文化して目に付くところに掲げたり、毎日唱和したりします。
以上5つ、経営理念を作る意味を取り上げましたが、もちろんこれ以外にもあります。
経営者の経営哲学が元になったものや、人格形成をうたったもの等いろいろな内容となっています。
ここのページを見ている方は開業時の場合が多いと思いますので、経営理念の機能的な部分を中心に取り上げました。
次に経営理念の決め方を見ていきます。
経営理念の決め方
経営理念というと大きな組織のもので、個人で事業を行う場合であればいらないといったイメージがある方もいると思います。
上で挙げた理念を掲げ、現状とのギャップをつくることは個人事業どころか個人でも行ったりします。スポーツなどのコーチングで行われることもよく見ます。
それではどんなことを理念や理想とするのでしょうか?
例えば、成功とは利益を出す事であるといってお金を最終目的とするのはどうでしょう。
当然、商売である以上お金を稼ぐということが目的であるのは間違いありませんが、果たして最終目的となり得るのかどうかという部分です。
利益は継続して活動していく為に必要なものです。人間でいえば食べ物といったエネルギーにあたります。
哲学的には色々と見方があるのかもしれませんが、現実に生きている感覚としては食べる為に生きているのではなく、生きる為に食べるわけです
商売は顧客や従業員、融資等をする金融機関などの第三者を巻き込んでいくものです。
例えば、経営者が自らの懐を肥やすことを最終目的とした場合、そこに賛同者がどれだけ現れるでしょうか。
しかし、こういった形に展開すると意味が変わってきます。
自らが継続性をもって儲かる
↓
その為には?
↓
組織が活動を続ける為に機能している
↓
その為には?
↓
従業員が継続できるような環境が必要である
こうなると経営者単独の利益とは言えなくなります。
さらに、顧客の満足まで広げたら、もう立派に社会的な満足が必要ということになり、経営者個人の利益とはもう別の次元の話となっています。
ミッション・ビジョン・バリュー
経営理念の内容をミッション・ビジョン・バリューとして明文化しているところも多いです。
元々、日本には馴染がない概念なのでピンと来づらいのですが、ひとつずつ見ていきましょう。
ミッション
ミッションとは、使命や任務といった意味です。商売は社会の穴を埋めていく作業です。つまり社会的に満たされていないニーズに応えていくことです。
誰の、何を、自分は満たしたいのかを考えます。他から綺麗なフレーズを持ってきて体裁を整える必要はありません。
自らの心の底から聞こえる声に忠実になります。それを言葉にして書いて下さい。
ビジョン
ビジョンは3つの中では一番イメージがしやすい概念かも知れません。理想像や未来像といった内容です。
ミッションを行うことで、どういった将来像となっているかを書き出します。
この時大事なのが、現状と将来像にギャップがあることです。
現状の範囲内で手が届く設定にするとその場に留まろうという力が働いてしまいます。
かといって自分自身でも信じられないような、現実味が感じられない内容ではなく、カラー映像でその状態が浮かぶようなリアリティーが要ります。
現状、自分自身の手が届く範囲では無い事を設定しても大丈夫かな?
と思うかも知れませんが、その世界をリアルに慣れ親しむ世界にする為に書きだして、普段目のつく所に掲示したり、唱和したりするものです。
バリュー
これは、価値や価値基準という意味です。ミッションを遂行し、ビジョンに到達する為に必要な基準という事です。
企業とかで良く見る行動規範や行動指針、行動基準などがバリューにあたります。
まとめ
経営理念は、誰の、何を、満たしていくことで、どういった将来像を作り、その為に必要な基準は何かという事を言葉にして目に見える形にするものです。
経営戦略や経営戦術は理念が元となりますので、心の底からリアルなものをお作り下さい。