飲食店の営業を始めるのために必要となるのが「営業許可申請」です。
色々と手間がかかるものですが、申請手続きはあくまでもゴールに向かう為の手段です。直接お金を生み出すものではありませんので、効率重視で行って参りましょう。
このページでは、飲食店営業許可の申請をわかり易く、5ステップに分けて見ていきます。
飲食店営業許可5ステップ簡単申請
上の図は営業許可が下りるまでの手続きの流れです。
大きな流れとしては、こんな感じです。決して複雑ではありません。
一発退場の可能性アリ食品衛生法
忙しい中、申請手続きは煩わしいことだと思います。
ですが、厚生労働省のデータを見ていただくと
2017年の全国の食中毒発生数事件数は、全国で1千件以上、飲食店だけでも598件となっています。(これは件数です。人数はもっと多いです。)
私の想像よりかなり多い印象ですがいかがでしょうか?
決してレアなケースでは無いからこそ食品衛生法、各種条例・通達などで定め国民の生命を守っています。
プロの皆さんなので重々承知の事と重いますが、許可後も衛生管理の意識をキープする事は絶対に必要です。
お客様の人生に重大な影響を与えたり、皆さんが初期投資で数百万~数千万かけて始めた店舗が、一瞬でダメになってしまう可能性もあります。
営業許可の内容は、その辺りの意味が含まれていることを踏まえて申請を行うようにしましょう。
それでは申請手続きの内容を見ていきます。
1. 初めてなら猶更 保健所への事前相談
【ステップ1】飲食店営業許可申請の最初のステップです。
基本的には内装工事着工前に完成図面を持って、営業する場所を所管する保健所へ相談に行きます。
これは、工事完成後に施設・設備の不備により工事のやり直しや、最悪許可が下りないといった事態が生じないようにするためです。
工事の計画が立ったら、早めに相談を行いましょう。
1.1 あなたの所管の保健所はどこか
「全国保健所長会」というサイトです。全国の保健所一覧があるので確認してみてください。
http://www.phcd.jp/03/HClist/HClist-tokyo.html#shinjyuku
弊所地元の多摩地区の所管はこちらです。
※2018年4月時点の情報です。WEBサイト等で確認をお願いします。
名称 | 所在地 | 連絡先 | 所管の市町村 |
西多摩保健所 | 〒198-0042 青梅市東青梅5丁目19号6番地 | 0428-22-6141 | 青梅市、福生市、羽村市、あきる野市、瑞穂町、日の出町、檜原村、奥多摩町 |
南多摩保健所 | 〒206-0025 多摩市永山2丁目1番地5号 | 042-371-7661 | 日野市、多摩市、稲城市 |
多摩立川保健所 | 〒190-0021 立川市羽衣町二丁目63番 | 042-524-5171 | 立川市、昭島市、国分寺市、国立市、東大和市、武蔵村山市 |
多摩府中保健所 | 〒183-0022 府中市宮西町1‐26‐1 | 042-362-2334
武蔵野市、三鷹市の連絡先0422-54-2209 |
武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、狛江市 |
多摩小平保健所 | 〒187-0002 小平市花小金井一丁目31番24号 |
042-450-3111 | 小平市、東村山市、清瀬市、東久留米市、西東京市 |
1.2 求められる飲食店営業施設の基準
※保健所によって実際の取扱いが変わってくる場合があります。必ず確認してください。
店舗の施設や設備は、衛生的で安全なものか基準が定められています。
それに沿って内装工事や設備などの設置を行うように求められます。
内容的には次の様なものがあります。
- 清潔な場所にあり、建物は堅牢な材質で耐久性がある構造になっているか。
- 床や内壁は耐久性、耐水性があり清掃がしやすい構造になっているか。
- 店内の明るさは十分にあるか。
- 吸排気を行う為の換気扇等が設けられているか。
- ねずみや害虫の侵入を防ぐ設備が設けられているか。
- 洗浄設備(シンク等)が2槽設けられているか。
- 厨房とトイレに、手洗器と消毒装置があるか
- 冷蔵庫には温度計が取り付けられているか。
- 飲用適と認められた水・お湯は出るか。
- フタ付きの汚物を処理する設備があるか。
ざっと書きましたが、やはり雑菌が繁殖しやすい水回りの規定が多いです。
これが全ての規定ではありませんので、詳細は次のリンク先をご覧ください。
飲食店営業施設の基準はコチラ
2. 申請書作成はココを確認
【ステップ2】です。
さぁ、いよいよ申請書の書き方を説明していきます。
申請書は保健所により書式が多少変わります。
所管の各保健所に直接貰いに行くか、WEBサイトでダウンロードをしてそれを使用して下さい。
2.1 保健所に提出する必要書類は?
保健所に提出する書類は次のものです。
営業許可申請書・・・・・・・1通
営業設備の大要・配置図・・・2通
食品衛生責任者の資格を証するもの
水質検査成績書(貯水槽使用水・井戸水使用の場合)
法人の場合は、この他に登記事項証明書が1通必要となります。
それでは各書類ごとに見ていきましょう。
営業許可申請書(個人が申請する場合)
上段
まず左上に「届出をする都道府県(保健所名)所長」と記載する。
申請する年月日を記載する。 住まいの郵便番号・電話番号を記載する。 住所はアパート・マンション等の場合は名称、部屋番号まで記載する。 次の名前は戸籍上の氏名を記載するようにしてください。 生年月日を記載する。 |
中段
新規か継続かに○をする。
営業所の住所を記載する集合ビル場合はビルの名称や階層まで記載する。 店舗の電話番号を書く。 店舗の名称を書く。 営業の種類は「飲食店営業」と記載する。複数の業種を申請する場合はすべて記載する。 申請者の欠格事項は該当する場合はそもそも申請できないので、該当しないことが前提として、ここでは「なし」と記載する。 |
下段
食品衛生責任者の氏名と食品衛生責任者として認められた資格に○をする。
栄…栄養士 食管…食品衛生管理者の資格を持つ人 調…調理士 食監…食品衛生監視員の資格を持つ人 製…製菓衛生師 養講…養成講習受講者 食鳥…食鳥処理衛生管理者 補講…補充講習会受講者 船舶…船舶料理士 その他…衛生管理責任者、作業衛生責任者、他府県の資格を持つ人等
資格を取得した年月日と資格の免許証や食品衛生責任者手帳等の番号を記載する。
法人が申請する場合は、住まいの郵便番号・電話番号は本社の電話番号とし、住所の欄は登記上の本社所在地を記載する。 |
ここまでが営業許可申請書の書き方です。
特に難しい所は無いと思いますので、次の書類の方へいきます。
続いての書類は、営業設備の大要と配置図です。
内容の方を見て参りましょう。
営業設備の大要・配置図
営業設備の大要と配置図は裏表となっています。
手書きでも大丈夫ですが、黒のボールペン又は万年筆で書きます。
作図は定規を使用して下さい。
1枚はコピーで構わないので2枚提出します。
営業設備の大要
営業する店舗の施設や設備を選択していきます。
これに記載した内容を基に施設検査が行われます。
どうしてもわからない項目が有れば、空白にしておき所管の保健所に確認してみてください。
営業設備の大要の詳細はコチラ
営業設備の配置図
配置図の記載にあたっては、まず店舗の各方向の寸法を計測します。
そこから客席と調理場の面積を計算する必要があります。
そして設備の配置を作図した図面に計算して寸法を書き込みます。
施設周辺の見取り図
営業所とその周りの見取り図を書いていきます。
保健所により作図する範囲が変わってきますので、指定通りに書いてください。
方角の目印も入れます。パソコン等で作ったものを貼付けても大丈夫です。
配置図・施設周辺の見取り図の詳細はコチラ
食品衛生責任者の資格を証明するもの
食品衛生責任者とは
食品衛生の管理運営や食中毒などを防止する知識を持った人をいいます。
営業者は自ら食品衛生責任者になるか、食品衛生責任者の資格を持った従業員を施設に1人置かなくてはなりません。
食品衛生責任者の資格が付与される為には
食品衛生責任者養成講習会を受けるか、調理士など一定の資格を持っている必要があります。
食品衛生責任者養成講習会
東京都の場合
一般社団法人東京都食品衛生協会が主催している食品衛生責任者養成講習会を一日受講します。
東京都以外の都道府県で受講しても大丈夫です。
営業開始時には、食品衛生者プレートを提示する必要があります。
講習会会場で販売しているところもありますので、持っていない方は800~1000円程度ですので購入しましょう。
食品衛生責任者についての詳細はコチラ
水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
集合ビルなどは、一旦屋上まで汲み上げ貯水槽に水を溜めることも多いです。
その場合はオーナーや管理会社が通常、年に1回の検査を行なっていると思います。
確認して直近の水質検査成績書をもらってください。
もし無い場合は水質検査を行う必要があります。
※許可後も年1回の水質検査は必要です。成績書は保管してください。
法人登記事項証明書(申請者が法人の場合)
法人が申請者の場合は法務局で登記事項証明書を取得してください。
最寄の登記所に行き、申請書に次の事項を記載します。
※コンピュータ管理される以前の登記簿謄本は本店・支店の所在地を管轄する登記所で取得
- 窓口に行く申請人の住所・氏名
- 会社の商号
- 本店・主たる事務所の住所
- 会社法人番号
- 請求事項
記載したら手数料の金額の収入印紙を購入して申請書に貼り、窓口に提出します。
窓口に証明書発行請求機が設置されている場合は
①画面の案内に従い、請求情報を入力をする。
②請求内容と手数料を確認し、名前を入力する。
③整理番号票が発行されるので受け取る。
④整理番号票に記載された手数料の金額の収入印紙を購入する。
⑤そこまでおこなったら待合室で名前が呼ばれるまで待っている。
⑥名前が呼ばれたら整理番号票と引き換えに、申請用紙を貰いそこに収入印紙を貼って提出する。
以上の流れを行ったら、その場で証明書を貰えます。
登記所に行って窓口で申請しなくても、郵送やオンラインでの申請も可能ですのでご利用下さい。
手数料はこちらの方が安いです。
2.2 HACCP
新たな衛生管理の方法に基づいた申請内容についての義務化が検討されています。
申請方法などが変わることが予想されますので、ご注意ください。
HACCPの詳細はコチラ
3. 申請書類>>保健所に提出からが本番
【ステップ3】
作成した書類一式と手数料を用意して、所管の保健所に提出します。
3.1 施設検査の打合せ
保健所で申請の際、担当者と工事の進行状況の連絡方法や、施設検査の日程の打ち合わせをします。
施設工事完了予定10日前くらいに提出する。
3.2 保健所の手数料
申請の際に手数料を支払いますのでご用意下さい。
東京都の場合、
保健所に支払う手数料の額は、飲食店営業許可の新規で18300円 更新で8900円となっています。
一部金額が異なる保健所もありますので、必ず確認をお願いします。
3.3 飲食店営業許可申請ができない人
欠格の規定は食中毒の再発防止の観点から取り入れられたものです。
次のような場合に該当すると、申請が出来ませんのでご確認下さい。
- 食品衛生法に違反して罰則や処分を受けた場合
- その罰則などの執行が終わった時(罰金を支払う等)や、処分が終わった時(許可の取り消し期間終了等)から2年が経っていない場合
- 法人の役員が、前の2つに該当する者がいる場合
保健所への書類の提出は以上の内容となります。
書類等に特に不備がなければスムースに終わります。
続いて、施設検査の立会いを見て行きたいと思います。
4. 心配いらない施設検査の立会い
【ステップ4】続いてのステップです。
申請する時に保健所で打ち合わせた日付に施設検査が入ります。
その時には立会いが必要になりますが、押さえるべき項目をしっかり押さえておけば、特に心配はいりません。
4.1 営業許可の有効期間査定基準
保健所では飲食店営業許可の有効期間を決める基準をもとに検査を行っています。
査定基準表
建物 | 鉄筋、鉄筋コンクリート、石材、ブロック、煉瓦造り |
天井・内壁 | コンクリート、モルタル、タイル、ステンレス等耐蝕性金属材 |
天井の構造 | パイプ等はすべて天井裏に収納され、天井面が平滑 |
床・腰張り | コンクリート、モルタル、タイル、石材、ステンレス等耐蝕性金属材 |
内壁・床の構造 | 内壁と床の接合部がR構造
腰壁がある場合には。接合上部か45度以下の取り付け構造 |
空調設備 | 機械による室温管理 |
洗浄設備 | ステンレス等耐蝕性金属材、陶製、タイル、コンクリート |
保管設備 | ステンレス等耐蝕性金属材、コンクリート、石材、ブロック、煉瓦 |
冷蔵、冷凍設備 | 機械式でステンレス等耐蝕性金属材、コンクリート、タイル |
製造・加工・調理・販売設備 | ステンレス等耐蝕性金属材、コンクリート、タイル、石材 |
給水 | 水道法による水道水、小規模給水施設(原水が水道水のもの) |
便所 | 水洗式 |
上記の項目にいくつ該当するかが、5年~8年の有効期間を決定するものの一つとなっています。
4.2 施設検査に備えての注意点
検査日当日までに設備が設置されていることと共に、使用できる状態にしておくことが大事です。
特に次のような項目は注意が必要です。
- 手洗器の消毒装置には液体せっけんを入れておく。
- お湯・水は出る状態にする。
- 電気・ガスは開通している。
- 冷蔵庫は前の日から電源を入れて冷やしておく。
- 冷蔵庫と調理場に温度計が設置されている。
- 客室と調理場がきちんと仕切られている。
特に難しいことは無いので必ず準備しておきましょう。
4.3 引換証
施設検査が終わると引換証を渡されるところもあるので、交付日まで保管しておいてください。
営業許可証がないと基本的には開店ができません。
しかし特に問題が無い場合は、翌営業日から開店しても良い場所も結構ありますので、確認してみてください。
5. 営業許可申請のラスト許可証交付
【ステップ5】お疲れ様でした。最後のステップとなります。
5.1 許可証の受け取り方
保健所で営業許可証が交付されるので、引換証と認印をもって所管の保健所へ受け取りにいってください。
代理人の方でも大丈夫ですが、その場合は代理人の方の身分証明書を持っていって下さい。
6. 祝・営業開始
さあ、待ちに待った営業開始です。
営業許可証と食品営業責任者プレートをお店の見やすい場所に掲示してください。
食品衛生責任者養成講習会の会場等で手に入れていない方は、インターネットでも販売しています。
大きさは場所によって若干変わりますので確認をお願いします。
東京の場合は
10㎝×20㎝の長方形で縦型と横型があります。大きさ等の基準が満たされていれば自作の物でも大丈夫です。
これからがスタートですが、営業開始後もいろいろと手続きを行うことも出てきますので、次をご確認ください。
6.1 営業許可後に申請が必要な場合
変更届
次のような変更が生じた場合は、変更届と営業許可証を持って所管の保健所に提出をします。変更があった日から10日以内に提出するようにしてください。
変更内容 | 必要書類 | 枚数 |
個人の方が結婚、離婚などで姓名が変わったとき | 戸籍抄本 | 1通 |
法人の商号、代表者の氏名の変更があったとき | 登記事項証明書 | 1通 |
個人の営業者が住所(住まい)を変更したとき | なし | |
法人の本社所在地を変更したとき | 登記事項証明書 | 1通 |
営業所の名称、屋号の変更をしたとき | なし | |
営業設備の大要の一部を変更したとき | 変更部分がわかる図面
営業施設の大要・配置図 |
2通
2通 |
法人形態を変更したとき | 登記事項証明書 | 1通 |
営業設備の大要の変更と法人形態の変更は状況により、営業許可をあらためてとる必要があるので、事前に保健所に相談して下さい。
廃業届
次のような場合は、廃業届と営業許可を持って10日以内に所管の保健所に提出をします。
営業を廃止したとき。
営業所を移転したとき。
営業者が変わったとき。
営業施設が増改築を行って変わったとき。
移転、営業者が変わった、営業設備が変わった場合は、新たに営業許可が必要になります。
相続や法人の合併・分割の場合で営業者が変わるときは、場合によっては承継が認められることがあるので、事前に保健所に相談してください。
更新
今後も継続して営業する場合は、許可期限満了日の約1ヵ月前に次の書類を保健所に提出して下さい。
その際に更新手数料を支払い、許可更新の手続きを行います。
営業許可申請書
現在受けている営業許可書(営業設備の大要・配置図添付)
食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)
1年以内に行った水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
お疲れ様でした。
以上が飲食店営業許可の申請手続きの流れです。
手続きは慣れないと時間や手間は、それなりにとられてしまいますが、保健所等に支払う実費だけで済むメリットがあります。
忙しい中大変だとは思いますが、なるべくわかり易く書いたつもりなのでこのページを参考にしながら手続きを行ってみてください。
商売のご成功をお祈りしております。
お困りのことがございましたらお気軽にご相談下さい。